新型コロナ重症化の指標
羽田雄一郎参議院議員が、53歳の若さで急逝されました。その病名を知って驚愕された方は多いと思います。新型コロナ感染肺炎で亡くなられました。高血圧、高脂血症、糖尿病の持病があったとはいえ、あんなに元気に活動された方が急死されたのは衝撃的でした。我々はこのような急激な経過を示す新型コロナ患者には何らかの免疫異常が存在しているのではないかと考えてきました。最近、新型コロナ患者では、特に重症者では、免疫チェックポイント分子、PD-1とTim-3を同時発現している キラーT細胞 (以下、悪玉キラーT細胞) が増加しており、しかもその重症化と深く関与していることが報告されました。我々はこの悪玉キラーT細胞を以前より研究しており、ガン患者の予後不良やガンの進行度と深く関与していることを報告しています。また、我々は一見健康に見えるが、様々な不定愁訴、例えば、疲れやすい、夜熟睡ができない、物忘れが多い、冷え性、風邪をひきやすい、などの症状を訴える方々を「未病」と定義していますが、これら未病の方でもこの悪玉キラーT細胞が増加していることが分かってきました。さらに、意外なことに自己免疫性疾患でもこの悪玉キラーT細胞が増加している事実を見出しました。この悪玉キラーT細胞の病態は重症のミトコンドリア機能不全であり、がんをはじめとした異物を殺傷する機能を、さらに免疫を負の方向にコントロールする免疫抑制機能をも喪失していると考えられます。悪玉キラーT細胞の末梢血中への出現は、T細胞ばかりでなく身体全体の細胞のミトコンドリア機能の低下、ひいては生命力の低下を意味しているのかもしれません。そういう方が新型コロナに感染すれば、重症化することは容易に考えられます。我々は、この悪玉キラーT細胞の末梢血中での値が癌患者の予後不良予測因子になるばかりでなく、新型コロナ患者の重症化の重要な指標になると考えています。