コエンザイムQ10と悪玉キラーT細胞-ミトコンドリア機能評価法
前回、コエンザイムQ10について述べました。末梢血中のコエンザイムQ10濃度は水素ガス吸引によって約60%の症例で増加を示し、その増加した症例では予後が改善されました。また、末梢血中のコエンザイムQ10濃度は悪玉キラーT細胞と有意な逆相関関係を示し、すなわち末梢血中のコエンザイムQ10濃度の高い症例では悪玉キラーT細胞の割合は低く、逆に末梢血中のコエンザイムQ10濃度の低い症例では悪玉キラーT細胞は高いという結果になりました。これらの結果は総括すると、水素ガスはコエンザイムQ10を活性化して(≒ミトコンドリアの活性化)、その結果、悪玉キラーT細胞が低下して予後が改善したと結論できると思います。これらの結果は、末梢血中のコエンザイムQ10濃度と悪玉キラーT細胞の割合がミトコンドリアの機能を反映しているを示しています。謂わば、末梢血中のコエンザイムQ10濃度は正のミトコンドリア機能を、悪玉キラーT細胞の割合は負のミトコンドリア機能を反映していると考えられます。癌患者様の中には水素ガスでコエンザイムQ10が変化せず、したがって悪玉キラーT細胞の割合も低下しない症例が存在します。ミトコンドリア機能がireversible 回復不可能な段階まで疲弊しているのかもしれません。悪玉キラーT細胞は元々PD-1の他にTim-3という疲弊のマーカーを発現していて、ミトコンドリア機能回復不可能な状態に陥っており癌環境を癌細胞に優位な方向に維持するためのサイトカインやホルモンなどを出しているというのが最大の特徴になっています。しかし、水素ガスを使用すると、54%の患者で悪玉キラーT細胞の割合が低下します。このことは何を意味するかというと、水素ガスはミトコンドリア機能回復不能と謂われている悪玉キラーT細胞でもそのミトコンドリア機能を再活性化してキラーT 細胞の機能を回復させることができることを示しています。